〔おかまいもしませんで〕
#1 ローカーボとの出会い①
私がローカーボに触れたのは、たしか2008年。ある医療法人の広報紙に載っていた記事を読んだときのことでした。記事には「低炭水化物食」という呼び方で書いてありましたが、その内容にとても驚いたことを覚えています。
筆者は、K先生という泌尿器科医。人工透析を担当するかたわら、「なぜ、こんなに透析患者が増えるのか。どうして糖尿病は治らないのだ?」という疑問をもち、アトキンス博士やバーンスタイン博士の著書を参考にしてローカーボを推進していたようです。
その年はちょうど、『The New England Journal of Medicine』(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン/略称NEJM)と、『Journal of the American Medical Association』(米国医学界雑誌/略称JAMA)の2誌に、ローカーボを肯定する論文が相次いで掲載された年です。
筆者のK医師は、「世界5大医学雑誌」といわれるもののうち2誌に同じ趣旨の論文が載ったことに、強い追い風を感じていたようでした。
医学雑誌は、世界に山ほど存在します。中には、お金さえ払えばどんな論文でも掲載してくれるお手軽な雑誌もあれば、幾重にも準備された審査を乗り越えなければならない雑誌もあります。NEJMは後者であり、世界最高の医学雑誌とされています。
そんなNEJMにローカーボを肯定する論文が掲載されたことは、相当エポックメイキングな出来事。K医師が興奮したのも無理からぬことなのです。
しばらくして、「生活習慣病の予防と治療にローカーボを取り入れて、ものすごい成績をたたき出している医者が沖縄にいる」との噂が私の耳に入りました。その噂の主こそが、誰あろう渡辺信幸先生でした。
その後、ご縁があって私は渡辺信幸医師と知り合うことになります。沖縄でお目にかかり、まだ半信半疑だった私に向けて先生が語ってくれた話は、ベタな表現ですが「目からウロコ」の連続でした。
私は医療にかかわる仕事をしていますので、少しは日本の状況を理解しているつもりです。肥満や糖尿病が増えに増え、国民医療費は37兆円を超えました。何らかの対策が必要なのですが、政府も厚生労働省も何もできません。
もしかしたら、ローカーボはそのブレイクスルーができるかも? そんな思いを心の奥に抱きながら、渡辺先生の話を聞いていたことをよく覚えています。