〔理論編〕


運動しても痩せません


1. ウォーキングの無意味さ

 肥満や糖尿病の人への食事指導と必ずセットになっているのが運動。確かに、無理のない程度に体を動かすのは悪いことではないのですが、残念ながら減量につながることはほとんどあり得ません。

 こうした場合には有酸素運動がいいといわれており、その代表はウォーキングです。しかし、それで消費できるのは【30分行って、体重と同数のカロリー量】でしかありません。たとえば、仮に体重60kgの人が30分ウォーキングして消費できるのは、わずか60kcal。ポテトチップを数枚食べたらトントンです。

 しかも、人体が運動でエネルギーを消費する際の優先順位があります。多くの人が、「運動すると脂肪が燃焼する」と考えていますが、そう簡単にはいきません。

 運動を開始してしばらくの間は、体内のブドウ糖がエネルギーとして使われます。脂肪が使われ始めるのは、有酸素運動を開始して30分後あたりからで、燃焼がMAXになるのは90分を過ぎてから。毎日、そんなに長時間のウォーキングが可能でしょうか?

 体重を1kg落とそうと思ったら、170kmものウォーキングが必要です。それだけやっても、運動をやめれば途端に体重は戻ります。こうした事情から、運動はどう考えてもダイエットに不向きだといわざるを得ないのです。

 運動は、筋力や体力の維持あるいは増強を目的に行うもの。減量目的で行っても、希望をかなえることは不可能です。当然ながら、膝の痛い人が無理に行ってはいけません。

ウォーキングの無意味さ

『ブラックジャックによろしく』 佐藤秀峰作 (漫画 on webより)


2. 女性には、「食べたくなる本能」がある

 運動しても、わずかな脂肪燃焼しかできないばかりか、余計におなかがすくだけ。運動後にドカ食いをすることになり、結局のところ努力も水の泡です。頑張って運動を1カ月続けて5kg痩せた人がいたとしても、確実にリバウンドが待っています。

 だから、「運動しても痩せない」のです。

 特に女性にこの傾向が強く、それは母性本能によるものです。出産と子育てをする必要がある女性は、妊娠中は胎児に栄養を与え、生まれた後にはおっぱいをあげなくてはなりません。

 いつ赤ちゃんが泣いても授乳するためには、自分の栄養が重要です。だから、女性には「目の前にあるものを全部食べる」という本能が備わっています。子供が残したご飯を「もったいない」と食べるのは、いつも父親ではなく母親ですよね?

 ジムに行ってバイクをこいだり泳いだりした後には、ものすごくおなかかすいています。そこで多くの女性は、ジムのロッカールームでサンドイッチを食べてしまうのです。これでは、痩せられるはずがありません。

 運動しようと意図するのではなく、日常生活の中で「体が勝手に動く」という感覚。LCHPの食生活でタンパク質をたっぷり取っていると、この感覚がやがて生まれてきます。女性なら、車を運転して行っていた買い物に徒歩で行くようになり、男性なら普段はやらない洗車を始めたり……。

 この「自分が動きたくなる感覚」を得るまで、特に運動を意識する必要はありません。まずは、食生活を是正することのほうが先決です。