〔理論編〕


糖質ってナニ?


1. 炭水化物との違い

 炭水化物と聞けば、すぐに思い出すのがデンプン。米・麦・イモなどの穀物をはじめ、ダイコンやレンコンなどの根菜類にも多く含まれる物質で、ヒトが摂取すると胃腸で消化されブドウ糖へと分解・吸収されます。炭水化物が分解された最小単位が「ブドウ糖」だと覚えてください。

 逆にいえば、ブドウ糖がさまざまな形で結合したのが炭水化物であり、多くの種類があります。といっても、少しややこしいので、図式化してみましょう。

  単糖類 =  ◆   ※ブドウ糖、果糖など
  二糖類 =  ◆◆   ※砂糖、乳糖など
  多糖類 = ◆◆◆  ※オリゴ糖、デンプンなど
             (◆の数は3個以上さまざま)

 こんな風に、最小単位である◆が1つで存在しているのが単糖類。2個つながっていれば二糖類です。もっと多くが複雑に結合して、◆◆◆◆◆◆◆◆◆のような炭水化物もありますが、それらも胃腸で消化・分解され、すべて◆1つの形になってから吸収されます。

 つまり、炭水化物は結局のところ「糖」の結合体。米やパンや麺類も、その正体は「糖質=甘いもの」というわけです。

 ただし、炭水化物の中には人体に消化されないものがあります。食物繊維です。

 ですから、正しくは、

 炭水化物 = 糖質 + 食物繊維 

であり、

 糖質 = 炭水化物 - 食物繊維 

 です。

 とすると、「炭水化物を制限する」という表現だと、もともと吸収できない食物繊維まで禁止するという矛盾を生じることになります。そこで使われるようになったのが、「糖質制限」という言葉でした。

 ちなみに、「糖類」というのは、単糖類と二糖類のこと。このあたりの情報は、食品や飲料メーカーのサイトに詳しく書かれていますので、もっと知りたい方はアサヒ飲料さんのサイトがわかりやすく書かれていてオススメです。

 糖質を多く含む食品にもいろいろあります。中でも含有量が多いのが、私たちが主食にしているコメや小麦。どれぐらい含まれているか、ちょっと見てみましょう。

 中盛りにしたお茶碗1杯のご飯(150g)に含まれる炭水化物は59.1gで、そのうち食物繊維は0.6gですから、糖質は58.5g。1個4gの角砂糖に換算して、15個弱です。

 小麦製品では、パスタの1食分100g(乾麺)では糖質69.5gですから、こちらは角砂糖にして17個強という計算です。

 コーヒーに砂糖をたっぷり入れて飲む甘党の人でも、せいぜい角砂糖2個ですから糖質は8g。なのに、ご飯や麺類だと15~17個分にもなります。驚くかもしれませんが、こうして私たちは毎日、主食からこれほど多くの糖質を摂取しているのです。

 おかずの野菜は大丈夫と思っても、意外や意外。たとえば、ベジタリアンが好んで食べる根菜も、それなりに糖質を含んでいるもの。ゴボウやレンコンは重量の10~15%が糖質ですから、積み重なればかなりの糖質摂取につながります。

 ダイエットのときには、「甘いものを控えなさい」といわれます。それで誰もが必死になってスイーツを我慢するのですが、ご飯を1杯食べただけで角砂糖15個。甘いものをいくら我慢しても、実は焼け石に水なのです。

 ご飯・パン・麺類などの主食を食べることは、砂糖をなめているのと同じ。そうして現代人は知らず知らずのうちに、糖質過剰による体調不良に悩まされています。

炭水化物との違い

『ブラックジャックによろしく』 佐藤秀峰作 (漫画 on webより)


2. 糖質は、さまざまな食品に隠れている

 主食のほかに、炭水化物を大量に含む食品といえば、まずはスイーツ。ケーキは主に小麦と砂糖でできているので、当然ながらすごい糖質量です。一般的なモンブランやショートケーキには、1個50g程度の糖質が含まれています。

 チョコレートやキャラメルなども、砂糖の固まりのような食べ物です。甘くないスナックなら大丈夫かと思っても、煎餅の原料は米ですし、ポテトチップスはジャガイモなので糖質だらけ。煎餅は重量の7割程度、ポテトチップスは5割程度が糖質です。トウモロコシの加工品が多いスナック菓子やシリアルなども、同じようなものです。

 そして、それらと一緒に飲む清涼飲料水もまた糖質。500mlのコーラには、56.5gの糖質が含まれています。野菜ジュースなら大丈夫だと思っても、多いものでは1パック200ml中に30gもの糖質が入っています。スポーツドリンクも、ほとんどコーラと同じレベルの甘さです。

 そうしたことに警鐘を鳴らすのが、アメリカのこのサイト。登場する食品が日本のものとは多少異なりますが、見れば見るほど驚かされます。

 LCHPは、「ローカーボ・ハイプロテイン」=「低糖質・高タンパク(&高脂質)」を意図する食事法です。糖質摂取を減らすための基本は、「主食と砂糖を避ける」と覚えればいいのですが、糖質は意外なところにも隠れています。野菜なら大丈夫だろうと思っていても、タマネギ(重量の約7%が糖質)やレンコン(重量の約14%が糖質)など、根菜類にも注意が必要です。


3. 5大栄養素と糖質

 食物に含まれる栄養素は、その働きから5つのグループに分けることができます。これを「5大栄養素」といい、①炭水化物 ②タンパク質 ③脂質 ④ビタミン ⑤ミネラル の5種類。それらの役割は、次のようなものです。

【炭水化物】
 人体のエネルギー源になる物質。胃腸で消化・分解され、ブドウ糖として吸収されて血液に乗って全身に運ばれます。使い切れずに余った分は、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に、さらには脂肪として脂肪細胞に蓄えられます。

【タンパク質】
 筋肉や内臓など、人体をつくる材料になる大切な物質。骨や血液の原料でもある、とても大切な栄養素です。

【脂質】
 ホルモンや細胞膜をつくる材料となる物質で、脳の60%も脂質です。体内で使われる脂質の80%は肝臓に貯蔵されたもので、食事から摂取したものは20%だけ。一部はエネルギーとしても使われます。

【ビタミン】
 A・B・C・D・E・Kがあり、体内で起こるさまざまな化学反応を効率化するために必要な物質。ほとんどは食事から摂取されます。

【ミネラル】
 カルシウム、ナトリウム、鉄などの電解質や元素。細胞や筋肉など体の各部位のはたらきを助ける役割を果たします。ビタミン同様、食事から摂取されます。

 以上の5大栄養素のうち、炭水化物・タンパク質・脂質の3つは1日の必要量が数十グラムとされています(※実際には、炭水化物はゼロでも構いません)。対して、ビタミンとミネラルの必要量はミリグラム単位以下と少量です。そこで、炭水化物・タンパク質・脂質の3つを「3大栄養素」と呼びます。

 このうち、タンパク質と脂質は体内でつくることができない「必須栄養素」で、人間が生きるために不可欠なもの。ところが、炭水化物だけは必須ではありません。ここに、現在の「常識」とされている風潮の勘違いがあります。

 巷でよくいわれる「ヘルシーな食事」は、「肉や脂を控えて、穀物や野菜を中心に食べる」というもの。つまり、必須栄養素であるタンパク質と脂質を多く含む「肉や脂」を控えて、必須栄養素ではない炭水化物を多く含む「穀物や野菜」をたくさん食べろというのですから、どう考えても筋が通りません。

 肥満や糖尿病、あるいはメタボリックシンドロームを指摘された方が医療機関で栄養指導を受けると、必ず「カロリー制限食」をレクチャーされます。これは「ヘルシーな食事」と同じで、タンパク質や脂質を控えて炭水化物をたくさん食べなさいという内容です。

 そう聞いて、おかしいと思いませんか? 糖尿病などで体調がすぐれない人に必須栄養素を禁止するなんて、もっと具合が悪くなってしまいそう……いえいえ、本当に糖尿病を増やしてしまうのです。

 厚生労働省が5年おきに実施している「国民健康・栄養調査」によれば、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」の合計が、1997年から2007年の10年間に1370万人から2210万人と急増しています。

 たった10年間で840万人、およそ1.6倍もの急増です。

 この方たちに実施された指導も、「カロリー制限食」です。ということは、この指導はどう見ても効果がないか、あったとしても効果が弱いと考えるのが道理でしょう。

 糖尿病は、血液中にブドウ糖があふれてしまう病気。原因は、糖質の過剰摂取です。それなのに、なぜかカロリーだけを制限して糖質過剰の食事を指導したため、こんなにも糖尿病が増えてしまったのです。

○資料:厚生労働省「2007年国民健康・栄養調査」