〔実践編〕


食べ方のアイデア


1. 「口中調味」の壁を破ろう

 ものを食べるとき、世界で唯一日本人だけの独特なスタイルがあるのをご存じでしょうか? 日本人は、「口中調味」という食べ方をしているのです。

 ご飯、トンカツ、煮物、漬け物、味噌汁というメニューがあったとします。このとき、普通ならまずトンカツを口に入れ、数回噛んだところでご飯を追加し、口の中で両者を混ぜながら味わうはずです。

 さらにご飯を追加したら、今度は漬け物か味噌汁との合成を始めます。こうして、複数のものを口の中で混ぜ合わせて食べるのが口中調味です。ご飯には味がないので、塩からいものを一緒にして食べる癖がついたと考えられています。

 LCHPでは、基本的に主食が存在しません。ですから、おかず1→ご飯→おかず2→ご飯→味噌汁→ご飯という口中調味が不可能です。ここに、乗り越えるべき壁があります。

 それを後押しする方法は、すべてを薄味にすること。LCHPをしばらく続けていると味覚が鋭敏になり、自然と薄味になるものなのですが、最初のうちは意識して薄味にするといいでしょう。

 栄養不足の粗食・菜食を続けてきた人は、味覚が劣化しています。舌苔(ぜったい=舌に白く残った食べかす)などが大量にあれば、味覚を阻害されて当然です。舌苔の有無は、糖質過剰の食事をしているか否かの一つの目安でもあります。

 タンパク質をたっぷりと摂取するLCHPなら、タンパク質でできた舌にも十分な栄養が回り、味覚を感じる味蕾(みらい)という器官も活性化します。低糖質なので、舌苔もたまりません。


2. それが無理なら豆腐を応用

 中には、おかずばかりの食事に慣れない人もいます。そんなときには、ご飯の代わりに豆腐を食べるという作戦が有効です。

 特に工夫はいりません。スーパーで豆腐を買ってきて、何も味をつけずに食卓に出すだけでいいのです。

 そのときには、できれば綿ごしを選ぶようにしてください。絹ごしとの製法の違いによって、わずかですが綿ごしのほうが糖質が少ないからです。

 大豆からにがりを作り、そのまま固めたのが絹ごし、豆乳部分を抜いてから固めたのが綿ごしです。

 綿ごし豆腐を「主食」と考えた食事。これなら口中調味も可能ですし、たいていのおかずとマッチできるはずです。


外食だって怖くない

『ブラックジャックによろしく』 佐藤秀峰作 (漫画 on webより)

3. 外食だって怖くない

 基本的なルールさえ理解できてしまえば、外食で困ることもありません。最も便利なのは焼き肉屋で、ここなら肉だけを食べて最後のご飯ものを遠慮すればいいだけです。

 ほかにも、居酒屋では焼き鳥や魚介類を食べておけば万全。ファミリーレストランでも、ご飯やパンを抜いたメニューだけを頼めばOKです。ホテルのバイキングでは、以前までは真っ先に行っていたお寿司コーナーなどを避けるだけなので、難しいことなど何もありません。

 ちょっと心配なのが、友人との会食や仕事での飲み会。こういった場合には、少々心苦しい面はあるのですが、「今は主食を抜くダイエットをしているので……」と、きっぱり宣言してしまいましょう。それが無理なら、「ちょっと血液検査の数値が悪かったので、糖質にドクターストップがかかっている」と言うのもいいかもしれません。

 病気であることを周囲に悟られたくないという場合には、「今はおなかがすいてない」という断り方しかないかもしれません。これなら、誰が聞いても自然です。

 LCHPを実践している人が、それを周囲に知られまいとして発した言葉(つまり嘘)の中での最高傑作は、「自分は米と小麦にアレルギーがあるから食べられない。下手をすると死んでしまうのだ」というもの。あくまで最終手段かもしれませんが、こんな奥の手もあります。実際、米や小麦のアレルギーをもつ人もいるので、その点から悟られることはありません。


4. 代用食品を活用

 LCHPは、文字どおり高タンパク低糖質の食事法です。それを私たちは「肉・卵・チーズ」という形にシンボライズしており、それぞれの頭文字から「MEC食」と名づけました。

 旧来の「ヘルシーな食事」とは正反対であるため心配になる人も少なくありませんが、その必要はまったくありません。実際に臨床応用している渡辺信幸医師はこれまでに3000人以上の患者さんを指導し、大きな成果を上げています。

 宗田哲男医師は妊婦に実施し、妊娠糖尿病と糖尿病妊娠の両方で安全な分娩につなげています。小児科が専門の今西康次医師は、小児の肥満および糖尿病に対してLCHPを導入しています。

 糖質過剰の食生活に、メリットはありません。

 しかし、これまでの食習慣からなかなか抜け出せない人もいます。そういう方は、いわゆる代用食品を利用するという方法もあります。

 大豆を原料とする「大豆粉」や、おからを加工した「おから粉」や「おからファイバー」、小麦の外皮だけを使った「ふすま粉」などがそれ。これらの使ったパンなどを自作する人は少なくありませんし、数々の製品も登場しました。豆腐を加工した「豆腐麺」や「豆腐米」というのもあります。

 私たちが提唱するMEC食では、「肉・卵・チーズ」を主食にするようおすすめしています。慣れてしまえば、ご飯やパンは一切いらなくなる人がほとんどですが、「たまには食べたい」というケースもあるでしょう。そんなときには、米や小麦以外のものでできた代用食品という考え方もできます。