〔実践編〕


LCHP/MEC食の効果

LCHP/MEC食の効果

『ブラックジャックによろしく』 佐藤秀峰作 (漫画 on webより)


1. 肉・卵・チーズをよく噛む!

 理論編での説明で、「ヘルシー」といわれているような栄養の取り方が道理に合わないものであることはご理解いただけたと思います。ヘルシー(健康的)といいながら、人体に必須の栄養素を摂取させない食事法には、大きな疑問を感じます。

 カロリー制限という概念にも、明らかな矛盾があります。たとえば、和牛サーロインステーキ200gと、ご飯4杯はどちらもおよそ1000kcal。肉とコメとでは、人体に消化・吸収されるメカニズムがまったく異なっているのに、カロリーという一つの数字だけで「同じ」と判断していることは理解に苦しみます。

 「カロリー」とは、物質を空気中で燃やしたときに出る熱量を指す物理学的数値ですから、それをそのまま生理学に当てはめたのは、いささか無謀でした。肉は「カロリーが高い」と敬遠されがちですが、人体に消化・吸収されて体脂肪になるのは糖質だけですから、同じ1000kcalでも健康へのリスクがあるのはご飯のほうなのです。

 それなのに、現代人の多くが「ご飯はヘルシー」だと思い込んでいます。繰り返しますが、「肉や脂を控えて、穀物・野菜を中心に食べる」という考え方には、科学的根拠がまったくありません。

 そうした食事、言い換えれば「粗食」や「菜食」や「少食」では人体の生命維持に必要な栄養が不足し、やがて「病気」という形になって破綻を迎えます。このことが、現代社会に蔓延する生活習慣病の最大の原因です。

 それを食い止めるため、私たちは「ヘルシー」といわれるものと正反対の食事――肉や脂をたくさん食べ、穀物・野菜をなるべく取らないという方法を提唱しています。その基本となる考えはLCHPであり、そこから導き出した私たち独自の方法論がMEC食というわけです。

 MEC食を実行する際のルールは、次のとおりです。

  •  ① ひと口30回よく噛む!
  •  ② 肉・卵・チーズをたっぷりと食べる
  •  ③ ご飯・パン・麺類などの主食を控える
  •  ④ お菓子や清涼飲料水はNG
  •  ⑤ 糖質を多く含む野菜を控える

 ②と③は、すでにご理解いただけたと思います。

 ④について少し説明すると、たとえば500mlのコーラには56.5gもの炭水化物が入っていますから、飲むべきではありません。乳酸菌飲料、スポーツドリンク、フルーツジュース、野菜ジュースなどにも大量の糖質が含まれています。それらを飲んでも、健康に役立つわけではありません。

 最近では「糖質ゼロ」の商品も多数発売されていますので、購入する際には成分表をよく確認するようにしてください。その際は「糖質ゼロ」を選び、「糖質オフ」や「糖類ゼロ」には要注意です。もちろん、ビールも同様です。

 お菓子は、甘くても塩っぱくても、たいてい米・小麦・トウモロコシを原料としています。砂糖も大量に使われているので、食べれば必ず太ります。

 ②を実行すれば、それだけで栄養満点。肉・卵・チーズを中心にたっぷりと、食事の最初に食べてください。そして、ひと口入れたら箸を置き、30回よく噛んで食べるのがMEC食の基本。時間にして、20分以上かけます。

 というのも、脳の満腹中枢がはたらくまでには食事開始から20分かかるから。かき込むような早食いでは、いくらでも食べられてしまうわけです。

 よく噛むと唾液が分泌され、満腹中枢が刺激されます。しかも、顔面や顎の筋肉のストレッチにもなり、これらの筋肉は首から胸までつながっています。このことが、顎をほっそりさせる小顔効果や、女性にうれしいバストアップ効果としても表れます。

 食べる順番としては、まず肉・卵・チーズ。それでも足りなければ野菜(推奨するのは葉野菜)、さらに足りなければ穀物を少量食べるという風にしてください。この順番なら、穀物を食べたくなる前に満腹になっているはずです。

 よく、「最初に野菜を食べると肉や脂を消化しにくいから痩せられる」などという説がありますが、肉や脂でヒトが太ることはありません。したがって、当然ながらその説に耳を傾ける必要もありません。


2. なぜ「肉・卵・チーズ」なのか

 タンパク質と脂質を十分に摂取するのが、MEC食の大前提です。肉だけを大量に食べていれば何とかなりそうだと感じますが、それでは少々不十分。タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルのすべてを満遍なく摂取する必要があるからです。

 日々の食事ですから、飽きないように工夫しやすいことも大切です。しかも、いつでも近所のスーパーで入手可能であり、簡単な調理で味つけのバリエーションが演出でき、価格もリーズナブルである食品をメインに据えることが必須条件。

 それらを総合した結果が「肉・卵・チーズ」であり、私たちは「3種の神器」と呼んでいます。「糖質制限」と少しだけ違うのは、高タンパク・高脂質の食事を意図することで、糖質を食べなくするという部分。先に「制限」があるのではありません。

 では、肉・卵・チーズそれぞれの特長を見てみましょう。

 ひと口に肉といっても、牛・豚・鶏・羊では栄養素がまったく異なります。サーロインとヒレとでも違います。その点を深く考えすぎると混乱してしまうので、1日あるいは1食単位ではなく年単位で捉え、「肉」と考えます。魚も悪くはありませんが、より人体に近いという意味から、まずは肉をメニューの中心に据えます。調理方法は、焼いても揚げてもOKです。

 肉=タンパク質だと考えがちですが、比率で見れば実はさほど多くありません。たとえば、豚コマ肉200gに含まれるタンパク質は、わずか28g。半分の100gは水分です。とはいえ、各種アミノ酸に加えビタミンやミネラルが豊富な点が、肉の長所です。

 卵は、やがてヒヨコになる完全栄養食。栄養成分を見ると、タンパク質と脂質が十分に含まれており、コレステロールもたっぷりで、足りないのは唯一ビタミンCだけ。極論すれば、毎日卵だけを食べてビタミンCのサプリを補っておけば、理論上それで人体に必須の栄養素をそろえられるほど優秀な食品です。

 しかも、卵は食品の中で最も価格が安定している優等生。今でも1個20円ほどですが、これは何十年も変化していないほどの安定ぶりです。毎日3個ずつ食べても、わずか60円しかかかりません。

 チーズは、そのまま食べてもよし、調理してもよしのユーティリティープレーヤー。牛乳200mlには10gほどの糖質が含まれていますが、発酵の段階でなくなってしまうので、チーズの糖質はほぼゼロ。その点でも、LCHPにはうってつけの食品です。

 MEC食で目安としている分量は、1日あたり

  •  ○ 肉200g
  •  ○ 卵3個
  •  ○ チーズ120g

 これらを3食に分けて食べればOKですし、卵やチーズをおやつ代わりに食べるのもおすすめ。寝る前に食べてもかまいません。卵を1日6個食べたりしても何ら問題はないので、いろいろなメニューにして楽しんでください。

 以上の食品を食べて得られる栄養分は、次のとおりです。一般的な数値を得るため、肉は豚コマ、チーズはプロセスチーズを選択してみました。

肉・卵・チーズ(図表)

 これで、タンパク質75gと脂質115.4g、コレステロール864mgが摂取できます。鉄分4.3mgに亜鉛9.4mgとミネラルも十分で、ビタミン類もほぼ網羅できます。唯一ビタミンCだけが心もとないので、その補充には葉野菜を加えれば万全。ビタミンというと果物を連想しがちですが、実はそれほど含まれていないので要注意です。

 MEC食との比較として、粗食風メニューの数値もあげてみましょう。ちょっと極端に設定して、3食とも同じメニュー(おにぎり1個100g、きんぴらごぼう100g、納豆1パック30g)とします。1日分は、この3倍です。※おにぎりの具や、きんぴらごぼうの調味料分は考えないこととします。

ご飯・ごぼう・納豆(図表)

 いかがでしょうか? 違いは一目瞭然です。粗食のほうは、タンパク質と脂質の必須栄養素がほとんど取れず、ビタミンやミネラルに至ってはゼロ行進。コレステロールもゼロです。こんな食事で満腹になったとしても、栄養価の面では完全に枯渇した状態です。

 わかりやすくするために、あえて極端な例を提示しました。とはいえ、一般に「ヘルシー」といわれる粗食に含まれる栄養を計算してみると、大方こういった内容になります。これでは栄養失調を招くばかりで、どう見てもヘルシー(健康的)な食事とはいえないのです。

 旧来の「常識」で見れば、MEC食は偏っているように感じるかもしれません。しかし、こうしてデータを見ればわかるとおり、人体に必要な栄養素を十分に摂取できる食べ方なのです。

 だからこそ、病気になりにくい体をつくれることも実証済み。何らかの持病がある人の多くが、薬を減らしたりやめられたりしているのも事実です。多くの方が、快眠や集中力アップを実感してもいます。

 以下、MEC食を実行した人が「よくなった」と実感している症状を列挙します(個人の感想を含むため、すべてが医学的に証明されたわけではありません)。

 ○糖尿病(1型・2型)/高血圧/脂質異常症/痛風/喘息/アトピー/脂漏性湿疹/花粉症/歯周病/下痢・便秘/逆流性食道炎/睡眠時無呼吸症候群/自立神経失調症/手荒れ・肌荒れ/薄毛・白髪/生理痛・生理不順/月経前症候群/更年期障害/関節痛/片頭痛/冷え性/性欲減退/倦怠感/情緒不安定・イライラ/不眠/うつ/肥満 etc,


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