〔分子から考える栄養学〕

栄養療法にハマった理由①

 皆さんこんにちは。
 新潟県長岡市で歯科医院を経営している吉岡秀樹と申します。

 自分でいうのは変かもしれませんが、ちょっと変わった歯科医院です。皆さんの街にある歯科医院と大きく違う点は、保険診療をしていないこと。それがなぜかについては、機会があればこのコラムでも触れてみたいと思います。

 大学を出て、まずは歯科の医療法人に勤めました。そこでは通常の歯科診療をしていたわけですが、いくつかの疑問が生まれてしまいました。せっかく虫歯を治しても、何カ月か後には同じ患者さんがまた虫歯でやってくる……。なんだか、堂々巡りのような気持ちになってしまったのです。

 皆さんのイメージもそうだと思いますが、歯医者といえば「歯が痛くなったら行く場所」です。でも、それじゃおかしいんじゃないの? 悪くなった場所をグリグリと削って埋めるだけでいいのか? と考えるようになったのです。

 そこで、思い切って開業に踏み切りました。一応の専門は口臭やドライマウス(口腔乾燥症)ですが、もっといえば予防歯科。口の中だけではなく体全体のことも考え合わせた治療を行っていますので、自分で造語した「口腔内科」なんて名乗ったりしています。

 ドライマウスは、多くの方が「2~3回受診したらよくなった」と喜んでくれます。しかし、なかなか改善しにくい方が何人かいらっしゃいました。

この方たちが改善してくれないと、私としてはスッキリできません。そこで、いろいろと手を尽くしてみたのですが、どうにもイマイチだったというのが正直なところ。

 そんなことに悩んでいたある日、とあるセミナーに行かないかと誘ってくれた先輩歯科医がいました。心療内科医と精神科医向けのセミナーです。そんなところに行く歯医者がいても面白いし、口臭やドライマウスにも関連するジャンルでしたから、いそいそと出かけることにしました。

 結論からいえば、セミナーはすごく面白く、かつ興味深いものでした。ところが、私はそこで聞いた話を自分の知識と結びつけることができず、完全に消化不良を起こしてしまいました。そこで、2カ月後にあらためて基礎から学びに行きました。

 聞かされたのは、大学でも習った「生化学」という基礎医学の講義に近い話。それを臨床現場でどうつなぎ、どう活用していくのかのヒントがもらえました。「ホントかよ!」と思ったような話も、生化学の教科書を開いてみると書いてあったのです。

 もうちょっと学んでみよう、と感じさせてくれるセミナーでした。


(よしおか・ひでき)
新潟県長岡市のブレス・デザイン デンタルオフィス院長。体の栄養状態から口内健康を考える診療を行う歯科医として知られ、その知識と技術を求める患者が全国から訪れる。保険診療を行わない点もユニーク。北海道大学歯学部卒。