〔それぞれのLCHP〕

カルテNo.1 T・Kさん(53歳男性)

自分がやらなければ、治るものも治らない!

 100kg近くあった体重が少しずつ減り始めた頃から、毎朝足がつるようになりました。同時に食後の高血糖昏睡も起き、ひどいときには朝食を食べて横になったまま、19時まで寝ていたこともあります。これは変だと思って病院に駆け込むと、HbA1cが10.1、血糖値が406という結果が出ました。

 担当医には、「このままだと、あと1週間もしないうちに倒れていた」と言われました。後から聞いた話では、それまでに来た患者の1中で2番目に高い数値だったそうです。

 糖質制限との出会いは、その担当医に「これを読みなさい」と本を手渡されたこと。それは、『バースタイン医師の糖尿病の解決』(リチャード・バーンスタイン著)と『糖尿病はご飯よりステーキを食べなさい』(牧田善二著)の2冊でした。そうして私は、2011年12月27日から糖質制限とインスリンを開始しました。

 糖質制限をしている方はご存じかと思いますが、バースタイン医師の本は医学専門書のような分厚さです。内容もすごく高度で、1型糖尿病である本人が実験台になって糖質制限をした記録が細かく書かれています。

 読み終えると、担当医は次に『はじめてのカーボカウント』(坂根直樹・佐野喜子著)と、『主食をやめると健康になる』(江部康二著)の2冊を貸してくれました。

 これら4冊の本でも、糖質制限の知識は十分に得られました。でも、一番わかりやすかったのは、担当医自身がまとめたレポートをコピーして渡してくれたものでした。その中から、少し抜粋してみます。

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 長年行われていた「バランス食とカロリー制限」は、個人では継続が困難であった。欧米では1990年代から、「カーボカウント」という炭水化物の量を測るだけの糖尿病食事療法が一般化してきた。

 炭水化物を摂取すると、1〜2時間以内に100%ブドウ糖になって吸収される。炭水化物を制限すれば吸収されるブドウ糖は少なく、体に蓄えられている脂肪が分解されてブドウ糖の代わりに利用される。

【食べてもいいもの】
肉、魚、卵、油、バター、チーズなど(その他の記載もありました)。
【食べてはいけないもの】
ジャガイモ、カボチャ、麺類、パスタ、寿司、果物、砂糖など。

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……といった内容です。

 実際に糖質制限食を開始するにあたっては、担当医との相談でインスリンを使うことになりました。まずは、ご飯を1食100g以下に抑えること。それ以外は本のとおりに、食べていいものはどんどん食べなさいという方針です。

 私は基本的に、炭水化物はご飯1食80g以内にしました。おかずは鶏の胸肉、野菜(主にキャベツ)を主流に、昼用には厚揚げなどを持って仕事に行きました。担当医に渡されたブドウ糖の顆粒を持ち歩いていたこともありました。インスリンを使っているので、低血糖対策が必要だったからです。

 その後は、自分で低糖質のパンを焼くようになっています。ですから、白米などの炭水化物はまったく口にしていません。

 結果は、明らかでした。2012年1月にはHbA1cが11.3、血糖値が102。2012年4月にはHbA1cが5.2、血糖値が96。2012年6月にはHbA1cが4.6、血糖値が96と安定しました。

 投薬もインスリンからジャヌビアになり、そのジャヌビアも6月には服用しなくなりました。糖質制限を始めて半年で、投薬離脱に成功です。2012年12月の検査ではHbA1cがJDS4.9(NGSP5.3)、血糖値102。体重も67kgになり、BMI20.6を維持していました。

 しかし、糖質制限を続けるときに気をつけないといけないのが、カロリー不足に陥って体重が減ること。私も一時期60kgにまで落ち込んでしまい(身長180cm)、立ちくらみなどが起きて気がつきました。体力や筋力も落ちました。

 そこで、いつも朝晩にやっていた30分のエアロバイクをやめ、昼飯後の30分のウォーキングもやめて、あえて糖質を少し摂取すると、体重は70kg近くまで戻りました。

 糖質制限で陥りやすい失敗のほとんどは、カロリー不足です。いつもの食事から主食を抜くだけの簡単なものと考えて実行すると必ずカロリー不足になり、体力が落ちていきます。成人男性の摂取カロリーは1800以上といいますので、1食あたり500kcal近く食べないといけませんが、それだけ食べるのは割と大変です。

 糖質制限とうまく付き合っていけば、数値は必ず改善していきます。ただ体重を落とすのではなく、ご自身の体と相談しながら行うことが重要です。 医者が治すのではなく、ご自身がやらなければ数値は改善していきません。医者は、やっていることに対してアドバイスや軌道修正してくれるだけです。

 自分がやらなければ、治るものも治らない!

 これが、私が糖質制限をしてきて実感していることです。

 現在も糖質制限を続けていますが、メニューはだんだん変化してきています。主食は大豆粉のパンを焼いて食べるか、豆腐。魚、肉、卵、バター、チーズなどはそのままです。

 忙しさに負けて昼食などを抜いてしまう日が続くと、すぐに体重が落ちて65kg以下になりますが、そんなときは市販の低糖質パンを食べて、わざと糖質を摂取するようにしています。

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